2018年8月26日

1990年代の……、アンダーグラウンドの……、アシッド・ハウスの……、そんな空気を含んだハウス・ミュージック ~For Tahn - EP By DJ Boring~


ディープ・ハウスとアシッド・ハウスが混ざった感じ? でしょうか。ジャンルで言うとローファイ・ハウス、あるいはロウ・ハウスにカテゴライズされる音楽のようです。シブいなあ、これ、と思う人もいるかもしれません。ロンドン在住というクリエイター、DJボリングの作品です。

うにょうにょとウネるシンセサイザーの音は妖しげに、バスドラムの音はワイルドに、パーカッションの音はワイザツに。そして女性の声のサンプルは妖艶な香りをふりまきながら、浮かび上がっては消えていく……。そんな作りの曲が並んでいます。

1990年代っぽい……、アンダーグラウンドの空気……、そういった言葉が付くハウスが好きな人は好きになるかも。





2018年8月23日

ヒップホップとハウス・ミュージックの波打ち際を行く ~Channel Tres - EP By Channel Tres~


ささやくような、つぶやくようなクールなラップと、なまめかしくセクシーなディープ・ハウスの交錯。ヒップホップ好きとハウス・ミュージック好きの両方を躍らせそうなEP作品です。

作者はチャンネル・トレスと名乗る、ロサンゼルスを拠点に活動しているというアーティスト。ほどよくむっちりとした、肉感のあるディープ・ハウス風のトラックの上に、たんたんと言葉を紡いでいくようなラップが乗っていく作りの曲が並んでいます。





2018年8月20日

日常のチルアウト・タイムにはこの甘くユルいビートを ~COOKIECAT By NICKELMAN~


何だかまったりと、そしてゆったりとのんびりと……。そんなふうにしてローファイな質感の、ざらりとした手触りのビートが流れていきます。この作品のテーマは”クッキーを食べたPUSSYCATの日常”とのこと。大阪のビートメイカー、ニッケルマン作品です。

ソウルやR&Bゆずりのような甘さをうっすらと感じるのは、クッキーを食べたというテーマがあるからでしょうか。ワルさと甘さ、ユルさがいいバランスで絡み合った、インストゥルメンタル・ヒップホップを展開しています。



2018年8月17日

古のソウル・アルバムのような佇まいの上品なヒップホップ ~August Greene By August Greene~


現代のヒップホップ、そしてジャズ・シーンのトップの中のトップと言っていいこの3人――コモン、カリーム・リギンス、ロバート・グラスパー――が組んで作品を作れば、そりゃあ、かっこいいものになるでしょう。

……という期待とハードルを軽々と鮮やかに飛び越えてくれました。上に書いた3人からなるユニット、オーガスト・グリーンの作品です。クラシカルなソウルとネオ・ソウルの風合いを含んだ、上品なヒップホップといったところでしょうか。そんな音楽を展開しています。

リギンスとグラスパーによるものと思われる、つややかなピアノの音やなめらかなフルートの音、軽めのドラムの音がしっとりとした空気を運び、コモンの落ち着いたラップはヴェテランのソウル・シンガーのような雰囲気、風格を漂わせています。

1970年代、もしくは1980年代にリリースされた、ソウルの名盤と呼ばれる作品と並べて聴かれるような作品。これはキャリアを重ねたヒップホップ・アーティストが作る作品の見本となる……、かな?



2018年8月15日

日本人らしい和の心を感じるアンビエント集 ~Early Tape Works 1986 - 1993 Vol. 2 By Kuniyuki Takahashi~


淡い……。さらりと描かれた淡い色彩の水墨画のよう……。そんなアンビエントが並ぶ、日本人クリエイター、クニユキ・タカハシの作品。タイトルの通りタカハシの活動初期である、1986年から1993年の間に制作した楽曲をまとめた作品です。

軸にあるのはアンビエント。そこからニュー・ウェーヴやインド音楽、サイケデリックといったあたりを包み込んだ音楽をゆったりと展開しています。そしてまた3曲目「Asia」や8曲目「Sakura No Mizu」から聴こえてくるメロディには和の心がうっすらと。

日本人らしいわび・さびを感じさせる音や、憂いを帯びたしっとりとした質感の音が随所に散りばめられており、そういった音が心を静めてくれます。



2018年8月11日

ヒップホップとシティ・ポップのいい出会い ~Caroline EP By 週末CITY PLAY BOYZ~


週末CITY PLAY BOYZ……。週末シティ・プレイ・ボーイズ……。ふむ、何ともステキなグループ名ではないですか! 2017年に活動を始めた福岡のヒップホップ・グループのようです。

このEPでは華やかな、そしてきらびやかな、いや、ラグジュアリーと言ったほうがいいのかな? そんな雰囲気を漂わせる週末の夜を描いたかのような、シティ・ポップの心を引き継いだヒップホップを聴かせています。

ディスコ・ファンクっぽい力強く弾むリズム、甘いウワモノの音、軽やかなラップが心地よく響いています。



2018年8月8日

マインド・デザインから届けられた、チルでファンキーなおくりもの ~Snax By Mndsgn.~


1980年代のディスコやソウル、そしてファンク、それから1990年代のR&Bとヒップホップがグシャッと混ざり合ったらこんな感じになるのでしょうか。アメリカ・ロサンゼルスのクリエイター、マインド・デザインによる作品です。

ナズやMF・ドゥームのアカペラを使って制作したマッシュアップ、もしくはリミックスを集めたものだとか。マインド・デザインの音楽にあるメロウであったり、シルキーであったりする音は後退し、ファンキーであったり、ダンサブルであったりする部分が押し出されています。

また、作りがラフであることも特徴のひとつで、遊びで作ったような、いい意味での軽さを感じます。リラックスして、楽しんでくれよと、そんなことをマインド・デザインが言っているかのよう。



2018年8月7日

様々な表情を見せる、ダークな色彩に染め上げられたアンビエント・アルバム ~Nothing Is Still By Leon Vynehall~


イギリス出身のレオン・ヴァインホールなる人物によるこの作品。何とドラマティックで、何と表情豊かなアンビエント・アルバムであることか……。天才と言われるレオン・ヴァインホール。天才……、うむ、なるほど、そう言われるのも分かります。

この作品の中心にあるのはダークな色彩のアンビエント。少し前だったらアンビエント・テクノと言われているかもしれません。その中にテクノが、ダウンテンポが、クラシックが投入され、どれがどれなのか分からなくなるまでかぎ混ぜられて、ひとつの音楽になっています。

そのようにしてできあがったダークな音楽は時にキラリと輝く光を放ち、時に激しく、時におだやかに、時に美しく、様々な表情を見せてくれます。ゆえに音を切り貼りしたコラージュ・アートっぽい作品でもあり、場面がクルクルと入れ替わる映像作品を思わせる作品でもあります。

ひたすら続く暗闇……。しかしその中で見る景色は、そして聴く音は、実に美しい。その美しい景色と音に出会うために、これを聴きましょう。