2017年10月26日

わびさびを感じる、和の心を感じる、インストゥルメンタル・ヒップホップを3曲 ~castaway. [], timepiece. [] and heartbreak. [] By j^p^n~


日本にゆかりがあるのか、日本のことが好きなのか? j^p^nと名乗るビートメイカーがサウンドクラウドにアップしていた楽曲はわびさびを感じさせ、日本の古風な風景を想起させる……、そんな美しいインストゥルメンタル・ヒップホップに仕上がっています。

ジャズのテイストを差し引いたヌジャベス?とでも言えそうな、ヌジャベスの楽曲に通じる、はかなさや切なさを感じます。この雰囲気は日本人の心に響くのではないでしょうか。j^p^nは日本人ではないようですが、作る曲には和の心が、日本的な美の心があるように思います。







2017年10月22日

秋を迎えたから、冬にならないうちに、この哀愁漂うインストゥルメンタル・ヒップホップに身を委ねよう ~Autumn Joints By Mujo情~


秋に接続……。このタイトルを見ると、おや、音からは秋らしい哀愁を、紅葉の色合いを感じなくもないような……。そんなことを思いながら聴く、ハンガリーのビートメイカー、Mujo情による『オータム・ジョインツ』を今日は取り上げます。

音楽のスタイルはこれまでとほぼ同じです。ゆったりとしたテンポを刻むドラムが静かにしっとりと鳴り、その上でジャズとソウルを絡め取ったピアノやホーンのフレーズがおだやかに舞う、インストゥルメンタル・ヒップホップを展開しています。

ほんの少しの寂しさを漂わせる、大人びた落ち着いた雰囲気が哀愁を、ヴァイナルの音を思わせるあたたかみのある音が紅葉の色合いを、聴き手に想起させるように感じます。今年の秋はこのビートテープと共に……。



2017年10月21日

TWINKLE+と素晴らしいメンツが贈る、最高のヒップホップショウ ~JAPANESE YEDO MONKEY By TWINKLE+~


日本の男による、いや……、漢によるヒップホップだ、これは。1996年から活動を開始した日本人MC、トゥインクルが初めてリリースするこのアルバムには、そんな言葉を使いたくなります。

トゥインクルなんていう、かわいげのある名前なのに、かわいげなど皆無。ジャパニーズ江戸モンキー? いやいや、これは日本のサムライでは? サムライが日本刀で敵を叩き斬るかのごとき勢いと、切れ味のあるラップがそこらじゅうでバッシバシと決まっています。

ヤサぐれていて、若干しゃがれたシブい声でもって、トゥインクルは容赦なく斬りかかる……といった趣。そう、それにしても、この声ですよ。このクールな声を持っていたら、ラップをしないわけにはいかないでしょう。これこそ正にラップをやるための声であると、そう言ってよさそうです。

そして1990年代のソウルフルなヒップホップの香りをほんのりと漂わせつつ、ややファンキーなリズムを刻む、ブームバップゆずりの太いビートを前面に押し出したトラックはラップに併走し、目の前のものをなぎ倒していくかのよう。この突進力が実に頼もしい。

そのトラックを手がけたプロデューサーにも、客演のMCにも相当な猛者が並び(詳細はこちら)、かっこいいヒップホップっていうのはこういうモンなんだよと、言わんばかりのショウを繰り広げています。



このページで視聴できます。

2017年10月18日

ダム・ザ・ファッジマンクの自我の旅 ~Damu the Fudgemunk's 20 Favorite Sample Flips (FREE MIXTAPE, NOT AN ALBUM) By Damu The Fudgemunk~


さらっと一筆書き。アメリカのビートメイカー/DJである、ダム・ザ・ファッジマンクのDJミックスはそんな仕上がり。自身のお気に入りのレコード(いや、お気に入りのサンプリング・ソースと言ったほうがいい?)を使っているようです。

ヒップホップやジャズ、ファンク、ディスコなどをラフにミックスし、楽し気な雰囲気をふんわりと漂わせています。自分の好きなレコードを思いつくままに、好きなようにミックスした……のではないでしょうか。

何しろタイトルが「Ego Trip Mix, Side A」と「Side B」。Ego Tripって自我の旅という意味みたいですよ。……とは言うものの、楽しく、気持ちよく聴けます。



2017年10月16日

やっぱりクラシカルな雰囲気を振りまく、ロイル・カーナーのライヴ映像 ~The Isle of Arran By Loyle Carner~


ゴスペルの曲をサンプリングしたことが話題にもなった、イギリス・サウスロンドン出身のMC、ロイル・カーナーのデビュー作『イエスタデイズ・ゴーン』。ユーチューブにアップされたライヴ映像ではゴスペルをサンプリングした……、ではなく、約10人編成のゴスペル隊をバックにラップをしていました。

『イエスタデイズ~』に通じる、このクラシカルな雰囲気はヒップホップではなかなか味わえないものではないでしょうか。カニエ・ウエストのデビュー作にあったヤンチャさを差っ引いたらこんな感じ?





2017年10月15日

このユルいインストゥルメンタル・ヒップホップには牧歌的という言葉を使おうか ~buffalo man & eagle king By wun two~


ユルくたゆたうスローなテンポのビートに乗っておだやかな旅に出ましょうか。ユルいインストゥルメンタル・ヒップホップの作り手の名手、wun twoによる、この牧歌的なインストゥルメンタル・ヒップホップをBGMにして……。

心地よい風が吹く高原を、口笛を吹きながら散歩している、そんな光景が目に浮かぶほどにのんびりとした空気を感じます。この空気を生んでいるのは、もっさりとしたあたたかみのある音。ほっこりとした気持ちにさせてくれる音です。

そんな音のヒップホップを主体にして、ジャズやボサノヴァ、ブルースの香りをうっすらと振りまきながら進む、約11分間の旅。いくつかの曲から成り立っていて、組曲っぽい作りになっています。



2017年10月4日

モクモクと、モヤモヤと、煙たく漂う音に身をまかせて ~NICKELMAN / FarragoL By NICKELMAN / FarragoL~


いやー、煙たい。これは煙たい。ドラムの音は輪郭がボヤけ、電子音は何層ものフィルターを通過したかのごときかすれ方をして、ヴォイス・サンプルは古いビデオテープの音声のように響く……、といった風にすべての音がモクモクと、そしてモヤモヤとしています。

日本人ビートメイカーのNICKELMANと台湾のビートメイカー、FarragoLによる楽曲を1つにまとめた本作には、そんな煙たくかすんだスモーキーな音を基調にした、ローファイなインストゥルメンタル・ヒップホップが並んでいます。

両者の楽曲のスタイルにそれほど変わりはなく、あえてちがいを挙げるとするのであれば、NICKELMANがややダブやジャズに寄っていて、FarragoLがややソウルやディスコに寄っている……、と言えるか……?

それよりもまずは、ここに濃密に漂うアンダーグラウンドの香り……。それを楽しめれば、それに酔うことができれば、いいのではないでしょうか。



2017年10月3日

これはきらびやかな星空を舞う歌声か ~Dive By Sundial~


フューチャー・ソウルとアーバン・ソウル、そしてシティ・ポップ、それからブレイクビーツやビート・ミュージックの理想的な融合……、とでもいったところでしょうか。アメリカのユニット、サンダイアルの新曲はそんないつも通りのサンダイアルらしい音楽です。

何よりもいいのは、やや派手めのトラックに流されることのない、歌が中心にあるところ。きらやびかな電子音に軽やかに乗る、少しばかりリリカルなメロディ、いいサウンドといいビートを聴くことができます。