2017年4月28日
モクモクと煙るビートが導く地下の世界 ~NICKELMAN_MIX By NICKELMAN~
日本人ビートメイカーのニッケルマンがニューヨークのレーベル、ダーティ・テープスから送り出した、ダーティでダスティな美しいビート。そのビートが導く先はアンダーグラウンド。アンダーグラウンド・ヒップホップってどういうものなのかと聞かれたら、こういうのですよと言いながら差し出したくなる音楽です。
タイトルが『ニッケルマン_ミックス』というだけあって、DJミックスの手法で作った作品なのでしょうか。整理されないほどに様々な音が混ざり合い、この作品で表現されているのは混沌かと、そんなことを思わせます。
2017年4月25日
ヒップホップのビートメイカーが中心となって繰り広げる、一大ブラック・ミュージック絵巻 ~Fusion Swing By Elusive~
一人のヒップホップのビートメイカーによる挑戦の先、実験の先……、そこにはヒップホップとジャズ、ファンク、ソウル、フュージョン、エレクトロニカ、そしてクラシックがあった。ここにあるのはそれらの音楽がきれいに整理されることなく、混然一体となって作り上げられる宇宙……、うむ、これはもう宇宙ですね。
ジャジー・ヒップホップ? もしくはエレクトロニック・ジャズ? ここで展開されている音楽を表現すると、これらの音楽がもっとも近いか。ヒップホップのビートとリズム、ジャズのベースとサックス、クラシカルなチェロとピアノ、きらびやかな電子音……、そういった音たちが折り重なり、高みへとのぼりつめていくかのよう。
それぞれのプレイヤーが思い思いに楽器を奏でているかのような、即興めいた演奏が続いていきます。それほど多くのことを決めずに、ゆーったりとした大きな時間の中で丹念に音を紡いでいくスケールの大きな演奏。この演奏が宇宙という大きな空間を想起させます。
その演奏の中心にいるのはElusiveというロサンゼルスのビートメイカー。ヒップホップとジャズを軸にして、呼び寄せた多くのゲスト・プレイヤーたちと共に様々なブラック・ミュージックを飲み込んでいくさまは、まさに一大ブラック・ミュージック絵巻とでもいった様子を見せています。
2017年4月24日
おだやかな空間で鳴る、あたたかなブレイクビーツ ~a various day By fujitsu~
心地よい目覚めのための? おだやかな休日の午前中のための? そんなことを目的としているかのような、ローファイな質感の音を基調にしたブレイクビーツ/インストゥルメンタル・ヒップホップでございます。
ジャケットの写真に写っているのはふとんですよね? これ? やっぱりこれは目覚めの、そして午前中のBGM。ゆるやかに沈むビート、気だるく響く眠そうなピアノとアコースティック・ギター、あたたかな陽光を思わせる女性シンガーの歌声と鳥のさえずり……。これらの音が重なり合い、おだやかな空間に導きます。
作者はフジツー? fujitsuと表記するイギリスのクリエイター。もしかしてこの作品ではイギリスの田舎の風景を描いたとか……、ということはないのだろうけれど、そう思わせるほど、自然の温もりみたいなものを感じさせる作品です。
2017年4月22日
心なごむハウス・ミュージックの世界にようこそ ~Farewell My Little Viking By Wizard of Loneliness~
どうやってもまとわりついてしまうB級感、どうやってもぬぐい去ることのできないファニーな雰囲気……。何なのでしょうか、この作品にあるそういう感覚は。ジャケットからして何なのでしょうか、この少年は。
ウィザード・オブ・ロンリネスと名乗るアメリカ在住のクリエイターによるこの作品の魅力は、そういったB級感とファニーな雰囲気にあると思います。陽気な雰囲気を振りまきながら、リリカルな雰囲気の旋律も随所に挟み込む、めくるめくB級ハウス・ミュージックの世界を見せてくれています。
ビートダウン・ハウスとディスコ、ローファイなヒップホップを混ぜ合わせた、地下のクラブでDJが鳴らしてもよさそうなハウスを展開しつつも、庶民的な感覚があるのが不思議。公民館で鳴っていてもよさそうですよ、これは。聴いていると、心がなごみます。B級という言葉はもちろん、ホメ言葉です。
2017年4月15日
今夜はこのクールなソウル・ミュージックで心地よくチルアウト…… ~Mac Ayres's songs on SoundCloud~
とろけるように甘く、洗練された雰囲気、そして音の質感はきめの細かい上質な絹を思わせる……、そんな歌を歌うシンガーがニューヨークにいたのですね。シンガーの名前はマック・エアーズ。現在、20歳。彼の歌はその日のいやなことをどこかに運び去り、心地よい眠りに導くかのよう。
音楽のスタイルはソウル(ブルーアイドソウル?)を軸とした中に、しっとりとしたアンビエントやエレクトロニカ、ドリーム・ポップのテイストを注ぎ込んだような感じです。正統派のソウルシンガーにはない、インディ・ロック勢に通じる感覚があるように感じるのは、ドラムの音がほんの少しローファイだからでしょうか。
正式な作品はバンドキャンプにある1作のみのようです。サウンドクラウドにアップされている曲を下に貼り付けるので、聴いてみてください。
2017年4月14日
密室で鳴る、暗く美しい電子音楽 ~poolscape By メトロノリ~
見てはいけないと言われていた秘密の空間をのぞいてみたら、そこにはまるで童話の世界であるかのような、暗く美しい空間が広がっていた……。そんな世界を音で表現した密室で鳴るエレクトロニカといったおもむきの音楽が聴こえてきます。
本作の作者であるメトロノリはメディアではシンガーソングライターと紹介されている日本人女性。シンガーソングライター? いや、これはサウンドクリエイターでしょうと言いたくなるほど、ここには歌の要素が希薄です。
環境音めいた音やいくつかの種類のヴォイス・サンプル、切ないメロディを奏でるしっとりとした質感の電子音、奥のほうで静かに鳴るブレイクビーツ……といった音の中に、歌はうっすらと入り込んでいるぐらい。サウンド・コラージュかと思わせる作りの楽曲が並んでいます。
そしてその楽曲にはシガー・ロスの音楽にある冷たい感触と、アメツブの音楽に似た繊細さが同居し、ここにはない世界を見せてくれます。ワールズ・エンド・ガールフレンド主宰のレーベル、ヴァージン・バビロン・レコードらしい作品です。
2017年4月10日
美しく、激しく、音がきらめくベース・ミュージック ~Man Vs. Sofa By Sherwood & Pinch~
磨き込まれ、研ぎ澄まされた必要最小限の音。ずっしりとしたドラムと肌を切り裂く冷たい風を思わせる電子音、輪郭がはっきりとした硬質なピアノ。それらの音が交互に交錯し、それぞれの楽曲を構築しています。必要最小限の音で成り立っているからこそ、ひとつひとつの音の美しさ、激しさが際立っています。
そんなこの作品はイギリスのダブ/レゲエのシーンを切り開いたエイドリアン・シャーウッドとダブステップのシーンを切り開いたピンチのコンビによるもの。両者に共通するのはダブ。ここにもダブはもちろんあるのだけど、音楽を構築するひとつのエッセンスでしかない印象を受けます。
ダブというのも、ダブステップというのも、どちらも枠が小さい。ベース・ミュージックというか、ゴツいエレクトロニカというか、そういう音楽を展開しています。チリひとつ落ちていない汚れのない空間に音がこだまする、美しい電子音楽です。
そして冷え冷えとした空気が漂う中、後半にさしかかるあたりに配置された「戦場のメリークリスマス」のカバーがあたたかい陽だまりのような場所として、聴き手に安息をもたらしています。この構成が……、またいいんです。
2017年4月5日
2017年の春はこのおしゃれなブレイクビーツと共に ~Chillhop Essentials - Spring 2017 By Chillhop Records~
春らしいあたたかさとさわやかな空気をまとい、そしてたまらなくおしゃれ! 男くさい小さなアパートで鳴らしても、その場をラグジュアリーな空間に変えてしまいそうな音楽たち。オランダのレーベルであるチルホップ・レコードが贈るおしゃれブレイクビーツ/インストゥルメンタル・ヒップホップ集、2017年・春の装い編です。
やわらかみのある丸っこいビートと、キュートに小躍りするジャジーなピアノやギターが華麗かつクールに重なり合い、おしゃれな空間を演出します。リリカルな雰囲気の楽曲を挟んでしんみりと、しっとりとさせつつ、聴き手の気持ちをふわっと軽く高揚させてくれます。
軽すぎない、おしゃれすぎない、アッパーすぎない、ほどよく落ち着いた大人びたテンションの楽曲が並び、ふんわりとした心地よい空気が流れていく……、そんな作りです。軽い装いで、外で聴くのにもよさそう。2017年の春はぜひこれを!
2017年4月2日
昭和の日本に帰るかのような、心地よくレイドバックしたビート ~FINE SELECTION By tajima hal~
冒頭からうっすらと漂う和の香り。ちょっと前の日本……、昭和の時代のなつかしい日本を想起させるような……、そんな香り。そしてローファイと表現する類の音とは違う、セピア色の写真のようにあたたかみのある音が特徴的。
日本人ビートメイカーのタジマ・ハルがここで展開するのはそういう雰囲気のインストゥルメンタル・ヒップホップ。チルアウト感のある、心地よくレイドバックした空気を含んだ音が耳をふわっと包み込みます。リラクゼーション・ダブという音楽があるのなら、これはリラクゼーション・ヒップホップとでも言おうか?
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