2017年1月29日
ヒップホップのビートメイカーが振りまく、ワルくて艶めかしい大人の色気にグラリと…… ~RAH's Office BeatReport By NASTY ILL BROTHER S.U.G.I~
NASTY ILL BROTHER S.U.G.I……。日本人ビートメイカー、ILL.SUGIの別名義であると思われます。ここではダブのレコードから聴こえてくるような、くぐもった音のベースが低く沈み込む、ジャズとヒップホップを掛け合わせたインストゥルメンタルを展開しています。
何はともあれ、まずは1曲目。ボクボクッとしたドラムとアダルトな雰囲気を振りまくジャジーなピアノが絡み合う「Jazz Like U」! 聴いた人はこの曲の色気にグラリとさせられ、ハートをキャッチされるのではないでしょうか。
ILL.SUGIのこれまでの作品にあったヤサぐれたワルい感じを残しつつ、いい意味で大人びて落ち着いた雰囲気が加味されているように感じます。大人の色気というヤツでしょうか。ワルい大人のジャズを飲み込んだBボーイによる音楽……といった趣。
2017年1月27日
地下へ潜り込んでいく、重くスモーキーなビート ~COFFEE POT TAPES By NICKELMAN~
深い深い……、深~いところへと引きずり込むような音楽。アンダーグラウンドのヒップホップってどういうのですかと聞かれたら、こういうのですよと言って、この作品を差し出すかもしれません。
これぞ、ゴーイング・トゥ・アンダーグラウンドなヒップホップと言いますか。薄暗い路地裏なのか、はたまた真っ暗闇の地下なのか、そんなところに漂っていそうないかがわしくて猥雑な空気を濃厚に漂わせています。
ヤサぐれたブルースと場末のバーでかかっている妖しげなジャズ、そして辺境の地で鳴るダブと地下のソウル……、それらを混ぜ合わせてダークなヒップホップに落とし込んだかのよう……。大阪のビートメイカー、NICKELMANの作品です。
2017年1月24日
こことは違う時間と空間の中で鳴るインストゥルメンタル・ヒップホップ ~morla hills By wun two~
時間の進み方をグイーッと遅くするまったりとモッサリとしたリズムと、ここではないどこかみたいな異国感……。これはテープがベロベロに伸びきったカセットテープから聴こえてくるヒップホップのリズムと、夏の暑さにヤラれてトロけたボサノヴァとジャズを混ぜたもの……?
音はぐんにゃりとねじ曲がり、目の前の空間も何だかぐんにゃりとねじ曲がったかのよう。こことは違う時間と空間の中で鳴っている音楽か、これは。ドイツのビートメイカー、wun twoが誘う異世界への旅……とでも言ったところでしょうか。
2017年1月23日
アンダーグラウンドの世界のヒップホップとファンクの邂逅 ~sepia tones edit By DJ HARRISON~
地下のファンクというのか、地下のヒップホップというのか。ファンクとヒップホップを一緒くたに混ぜ合わせて地下の世界に引きずり込んだ、ドラマーでありビートメイカーでもあるDJハリソン aka デヴォーン・ハリスの作品。
モクモクモクモクとしたスモーキーな音で煙に巻かれて、そしてズルッと地下にすべりこまされる……、聴いているとそんな感覚を覚えます。重くてダルいファンキーなリズムが地面をうごめくインストゥルメンタル・ヒップホップ。
2017年1月20日
黄昏時を彩るインストゥルメンタル・ヒップホップ ~Same Old,same old By Yotaro~
冒頭で聴こえてくるファンキー・ジャズ風のエレクトリック・ピアノのフレーズを聴いて、おや、これはこれまでの作品とちょっと違う……と思わせる、日本人ビートメイカー、Yotaroの作品。
そのちょっと違うという感覚はハズれてはいないのではないでしょうか。この作品ではYotaroの音楽の特徴とも言えるブームバップのテイストがやや後退し、古いジャズやファンクの息吹がより多く吹き込まれているように感じます。
とはいえ、古いレコードからサンプリングしてきたかのような、この人らしいあたたかみのある音は健在。そしてジャズのテイストを含んだ洒脱なフレーズを随所で響かせていて、スマートなところも見せています。
きれいな夕陽のようにほっこりとした雰囲気を振りまくインストゥルメンタル・ヒップホップ。これは黄昏時にぜひ……。
2017年1月18日
今宵はこのこじゃれたビートに酔うことにしよう ~Chillhop Essentials - Winter 2016 By Chillhop Records~
まったく何なのでしょうか、このこじゃれっぷりは。この作品はこじゃれた音が好きな人に届けよう。ためいきが出そうなほどにこじゃれていて、そして洗練されたインストゥルメンタル・ヒップホップが並んでいます。
そんな作風に仕上がった、オランダのチルホップ・レコーズなるレーベルのコンピレーション・アルバム。このレーベルらしいおしゃれ感としっとり感、このレーベルのカラーですね、それがすみずみにまで行き渡っています。
それぞれの曲にあるこじゃれた音は冬の夜に一人でどこかにポツンとたたずんでいるようなクールな空気と切なさをまとっていて、寒い冬の夜に部屋で一人で聴くのによさそう。心をポッとあたためるやさしいヒップホップ。
2017年1月14日
ヒップホップからエレクトロニカ、ジャズを繋ぐコズミックな音 ~nangok ep By Arµ-2~
宙にフンワリと浮き上がるような、コズミックな電子音に彩られたインストゥルメンタル・ヒップホップ。……と言えるのですが、ここにある音楽はヒップホップとエレクトロニカ、そしてジャズが交差する位置で鳴っているかのよう。そんな音楽を展開する日本人ビートメイカー、Arµ-2のEP作品です。
音の質感はローファイなヒップホップによくある感じのものなのだけれど、リズムが何やら変則的。本来鳴るはずの位置を微妙に外した位置でドラムが鳴っている……のかな? そのリズムとコズミックな電子音が穏やか、かつ愉快に戯れています。
2017年1月11日
休日の心地よい目覚めを演出するローファイなフォーク・ソング ~LOVING By LOVING~
春のあたたかい陽光を浴びて気持ちよくなってしまったか、夏の暑い日差しに焼かれて干からびてしまったかのよう。ユルく心地よく、そしておだやかに鳴り響く、ローファイな質感の音を基調にしたフォーク・ソングが並んでいます。おそらくカナダを拠点にしていると思われる、ラヴィングなるバンドの作品です。
仕事や学校がある日の朝に聴くには、これは力が抜けすぎ。こんなにお気楽でラヴリーなフォーク調の歌を聴いたら、出かける気力がなくなってしまいそうです。なのでこれはぜひ休日に聴きましょう。できれば天気のいい休日に。
つま弾かれるチープなギターの音と、何だか眠たげなかすみがかかったような歌声が目覚めたばかりの体にちょうどよく合いそう。
2017年1月10日
朽ち果てた先の美しい世界 ~(For Now We See) Through A Glass Dimly By Antonymes~
みんなが寝静まったら、イギリスの作曲家であるAntonymesのこの作品を引っ張り出してくることにしよう。冷え冷えとした静かな夜にポッと灯りを灯すポスト・クラシカル、もしくはアンビエントといった風の音楽が心をあたためてくれます。
軸となるのは荘厳と表現したくなる、重々しい空気をかもし出しながらも、いたってシンプルなメロディを奏でる繊細なピアノの音。ところどころで聴こえてくる打楽器や弦楽器、そして電子音や人の声はピアノの繊細さを損なわぬよう、さりげなく挿し込まれています。
小難しく、難解になることがないので、楽曲が描き出す美しい世界の中にスッと入って行くことができます。その美しい世界というのはジャケットにあるような退廃的な美しさ。でも、実はその美しさは、退廃の先にある再生した世界を描いた末に生まれたものではないかと……、ここにはそんな希望めいたものがあるように感じました。
2017年1月8日
そのビートが導く先は穏やかな午後の眠りの中…… ~phenomenology By ONEHALFHUMAN~
しばらくチェックしていないあいだにリリースされていました。イギリスのビートメイカー、ONEHALFHUMANの作品でございます。相変わらずキュートでクールなインストゥルメンタル・ヒップホップを展開しています。こういう音楽があるから、イギリスはクール、というイメージが日本にはあるのでしょうか。
軽いリズムの上に乗る、スカした雰囲気の洒脱なピアノやギター、のどかな田舎の夕暮れ時にどこかから聴こえてくるかのようなホーンの響きが何ともキュート。そして映画やドラマからサンプリングしたのかと思わせる、ヴォイス・サンプルや効果音みたいな音が重ねられており、コラージュ音楽めいたところもあります。
手の込んだ作りではあると思うのですが、それを感じさせないサラッとした仕上がりなので、普段のBGMにぴったり。午睡に導くあたたかさやほっこり感も……。
2017年1月6日
1990年代のヒップホップを現代版にアップデートしたかのような? カズミ・カネダによるDJミックス ~SCR Mix Series Vol.15 By Kazumi Kaneda~
流れるように流麗に、そしてメロウにアグレッシヴに攻める、カズミ・カネダによるDJミックス。ジャジー、ソウルフル、1990年代……、そんなヒップホップが正攻法のスタイルで清々しくミックスされています。
1990年代のヒップホップを2017年のテイストでまとめたらこんな感じ……、と言えるでしょうか。1990年代っぽさを残しつつ、昨今のジャジー・ヒップホップのテイストを忍び込ませています。
Tracklist
1. Hawk House - Chill Pill (Experiment 2)
2. Ebrahim - This Is Dope avec Häzel
3. Jazz Liberatorz - Dark Keys (feat. M’salem)
4. Hocus Pocus - Signes des Temps (feat. Stro the 89th Key & Mr. J)
5. Pat D - Relax Your Mind
6. Longevity Crew - California
7. Ten Thieves - It Don't Matter (Straight Mix)
8. Beastie Boys - Get It Together (Buckwild Remix Instrumental Add Rhodes Play KazumiKaneda)
9. Grand Puba - I Like It (Buckwild Remix, Feat.Sadat X)
10. The Roots / Proceed IV
11. The Beatnuts - Props Over Here
12. J. Rawls - A Tribute To Troy
13. lnl - Fakin Jax (Kazumi Kaneda Remix)
14. Kev Brown - ALWAYS
15. Jacewon - Refined Devine (Revisited)
16. Tha Connection - Zen (Remix)
17. Specifics - Let's Get
2017年1月5日
極上のチルの世界に飲み込まれよう ~COW / Chill Out World! By The Orb~
チルアウト・ワールド! それも極上の! いやはや、素晴らしい。イギリスのアンビエント・テクノ大王が実に大王らしい、大海原に立ち昇る朝日のごとき輝きを放つチルアウト……、というよりアンビエントですね、これは。そんな音楽を堂々とダイナミックに展開しています。
人の手の温もりを感じさせる電子音と大自然の一部から聴こえてくるかのような音が一緒くたになって、聴き手の体を包み込ます。少しずつ太陽が昇ってくるさまを描いた一大アンビエント絵巻といった様子。すべての音がピュアで美しく、生まれたばかりのような輝きを放っています。
そしてこれ、朝の通勤、通学のときに朝日を眺めながら聴くと、ばっちりハマるのです。私がそうやって朝の通勤時に聴いているので、間違いありません!
2017年1月4日
エレクトロニカとヒップホップの境界にある心地よい音の連なり ~MELTSTUFF By EeMu~
冒頭の思わず拍子抜けするほどの心地よさにヤラれてしまいました。インストゥルメンタルのヒップホップだと思って聴いてみたら、何なんですか。エレクトロニカから抽出した心地よい音を丹念に練り込んだような、エレクトロニカ・ミーツ・ヒップホップなこの音楽は!
そうなんです、ここで展開されているのはエレクトロニカとヒップホップの境界にある音楽。日本人ビートメイカー、EeMuの作品です。あくまでもゆったりとたゆたうように心地よく。そして未来的な……、フューチャリスティックな雰囲気を振りまいているところもいい!
2017年1月1日
休日の音楽、ヒップホップ編……、そんな作品はこれ! ~Unreleased Ja$$ 2012-2013 By Melodiesinfonie~
あけましておめでとうございます、みなさん! いかがお過ごしでしょうか。今年もよろしくお願いいたします! 正月休みでは映画やドラマのDVDをとにかくたくさん見る……、という過ごし方をする方もいると思います。このブログでは音楽のことを書いているので、正月休みに聴きたい音楽のことを書きます。
というわけで、そんな作品。それはスイス・チューリッヒのビートメイカー、メロディシンフォニィのこの作品です。タイトルから察するに、これまでリリースしてこなかった、未発表の曲を集めたものと思われます。
内容はこじゃれたジャジーなテイストのピアノやギターが時にキュートに、時に優雅に踊るインストゥルメンタル・ヒップホップが中心。ゆったりと、そしてのんびりとした、ホリデイ感のある雰囲気が何とも心地よく感じられます。さらにはファニーで洒脱な味わいもあり、おしゃれな空間も演出してくれます。
これこそ休日の音楽、ヒップホップ編といったところ。また、曲数は全42曲、トータルタイムは約100分という、かなりのボリュームがあり、こういうボリュームのある作品こそ、長い休みのときに浸るのにちょうどいいってなものです。
いい意味でスカした、力の抜けたところがあり、それがまたよい。この音楽のように力を抜いて、今年もクールにいきましょう。
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