2017年3月19日

キーボードから放たれた音の粒が軽やかに舞い、なめらかに滑る ~Experience EP By Joe McDuphrey Experience~


ふわりと浮き上がり、揺らめきながら美しい輝きを放つフェンダー・ローズの音の粒なのか、エレクトリック・ピアノの音の粒なのか、どちらだこれは……。少し硬めの音のドラムとゴニュゴニュとうごめくように鳴るベースの音の上をピアノが軽やかに舞い、なめらかに滑る……、そんなジャズ・ファンクを展開しています。

作者はジョー・マクダフィという方。何とこの方、マッドリブによるプロジェクトであるイエスタデイズ・ニュー・クインテットのキーボーディストとのこと。とは言ってもですね、イエスタデイズ~のメンバー全員がマッドリブの変名なので、演奏しているメンバーは全員マッドリブ。つまり、マッドリブのプロジェクトということ。

そしてここで展開しているジャズ・ファンクからはイエスタデイズ~ほどイカれていない、ブッとんでいない印象を受けます。終始リラックスした演奏なので、聴き手はピアノの音の心地よさにフォーカスしやすいのではないでしょうか。ちなみにこの作品は2002年にヴァイナルでリリースしたもののデジタル版です。



2017年3月14日

一日の終わりはしんみりと…… ~What Are We Made Of? By SHIGETO~


あれっ、シゲトってこんな感じだったっけ? エレクトロニカ系の音楽を作っている日系アメリカ人であるシゲトのことを知っている人は、冒頭のジャジーなサックスのフレーズを聴いて、そう思うのではないでしょうか。

そういうふうにジャズっぽい音で始まる曲ではありますが、冒頭以降は奥深くで静かに鳴るリズムと風の音を思わせる電子音の中に美しいピアノの音が響く、アンビエントタッチの曲を展開しています。終わりの方でうっすらと聴こえてくる、サックスの音がいい味を出しています。

アルバムの最後にありそうな曲というか、楽しかった一日のことを寝る前に思い出させるような……と言いますか、そんな曲。一日の終わりに、ふとんに入る前に、ぜひどうぞ。



※シゲト ライヴ映像



2017年3月9日

ユルいビートときらびやかな電子音がおだやかなひとときを届けます ~Azulejos By GeminisAzul~


ヒップホップからエレクトロニカに接近し、そのあいだをのらりくらり……。どちらとも取れないあたりをさまよいながら、しかしそれでも最後はヒップホップに着地する日本人ビートメイカー、GeminisAzulの作品。

日本の庶民のヒップホップといった印象を受けます。この作品からほっこり感を覚えるのはその印象ゆえでしょうか。春の日差しを思わせる、きらびやかなあたたかい光をまとったローファイな音が耳にやさしく響きます。

わたしたちの日常にほっと一息。日常の隙間にこのおだやかなヒップホップがなごみのひとときを届けます。さあ、それではチルしましょうか。この音楽はそんなことを言っているかのよう。

そして生真面目な音楽は作りませんよと言っているかのごときユーモアを振りまきつつ、時にホロリとさせるリリカルなメロディをスッと挟み込むところが、この人の音楽を特徴的なものにしているように思います。



2017年3月4日

甘くて苦い、そして粗いビート・ミュージック ~KuroST​.​BLQlordTESLA By zeroh~


ヒップホップとエレクトロニカ、ベース・ミュージック、トラップ……、そんなあたりがグシャッと一緒くたになったような音楽。アメリカ・ロサンゼルスのビートメイカーであり、MCでもあると思われる、zerohなる人物による作品です。

無機質な印象を与える粒の粗いドラムの音は、古いドラムマシンを使っているかのよう。そして図太いベースの音からはこれまた無機質な印象を受けます。しかしその上に乗る、ジャズやソウルのテイストを含んだピアノの音や電子音にはほんのりとしたあたたかみが……。

それらの音は昔のソウルやヒップホップのレコードから聴こえてくる音に被さっている膜みたいなものを引きはがして、むき出しにしたような音。ローファイな音と言ってもいいのだけれど、それとはちがう、殺伐とした雰囲気を感じます。でも、甘いんだよなあ。





2017年3月1日

都会の路上から見上げる星空のような音楽 ~[TTV003​]​​​: Dystopia By Cram x Aru2~


ぐりぐりぐりっとワキバラにめり込んでくるような低音域の音が実に心地よく鳴っています。これは1990年代のブーム・バップと2000年代のベース・ミュージックにある低音域の音をいいあんばいで混ぜ合わせた音……、大好きです、こういうの。

これがディストピアって……、いやいや……。心地よく鳴る低音域の音、そしてヒップホップにソウルを絡めたメロウで色気のある展開……、そんな音の連なりにうっとりしていると、これはユートピアでしょう!と言いたくなります。

本作は2人の日本人ビートメイカー――CramとAru2――によるアーバンな雰囲気のメロウ・ヒップホップ集。そう、たしかにアーバン、たしかにおしゃれ。でも、ヒップホップらしいイカガワシサやワイルドさをしっかりと練り込んでいます。都会の薄汚れた路上から星空を見上げているかのような音楽です。