2021年9月23日

祈りにも似た歌声の行く先は…… ~Little Oblivions By Julien Baker~ (2021 Release)


このヒリヒリとした痛みを伴ったような歌声にはどうしたって心を揺さぶられます。切迫感とでも言いましょうか、そんな感覚を覚える瞬間も……。そう感じさせるのはもちろん曲調や編曲によるところはあるのでしょうが、この歌声ですべてを持って行くかのようです。
本作はアメリカの女性シンガーソングライターであるジュリアン・ベイカーの3作目のアルバム。わたしはこの人の作品は初めて聴いたので、まずはこの歌声に触れずにはいられず……、そして書きました。それぐらい強い個性、存在感があります。

音楽的には1980~90年代のアメリカのオルタナティヴ・ロック、グランジを連想させるインディー・ロックといった趣き。演奏は熱くなってもどこか冷めた感触を残しつつ、それぞれの楽器が鳴っています。おごそかな空気を漂わせる中盤から後半の流れが個人的には特に好きです。

2021年9月17日

おだやかなビートに流されて ~Room By matatabi~ (2021 Release)


ジャンルとしてはインストゥルメンタル・ヒップホップなのだと思いますが、このほのぼのとしていて、おだやかな音楽をヒップホップと言っていいのでしょうか? 本作の作者である日本人ビートメイカー、マタタビの作品を聴いているといつも思うそのことをここでも思いました。

ほのぼのとしたムードはここでも変わらず、ヒップホップとムーディなジャズが織り成す心地よい音楽を存分に聴かせてくれています。なるべく外出は控えてくださいと言われる昨今ですから、部屋でこの心地よい音楽に身をゆだねましょう。タイトルも『ルーム』ですしね。

2021年9月10日

グリフ・リースが生むサイケデリック・ポップの素晴らしさは何も変わらず ~Seeking New Gods By Gruff Rhys~ (2021 Release)


ただただいい歌、ただただいいメロディが並んだ気持ちいのいい音楽。演奏も華やか。気持ちが晴れやかに、フワッと軽くなる感覚を覚えます。ウェールズ出身のロック・バンド、スーパー・ファーリー・アニマルズ(SFA)のヴォーカル&ギターであるグリフ・リースのソロ作品です。

この人の音楽は、ヒネりの効いた、ネジれた、みたいな表現をされることもありますが、ここにあるのはシンプルないい歌。SFAの1作目のアルバムは1996年リリース、ソロではこれが7作目。キャリアを重ねても変わらずに、こんななにも瑞々しい曲たちを聴かせてくれることにうれしくなりました。

うれしさや喜び、そして楽しさに溢れた幸福なポップ・ソング、いや、サイケデリック・ポップを堪能しましょう。

2021年9月6日

ひなたでまどろむ時間を届けるビート・ミュージック集 ~Beat Theme By Sweet William~  (2021 Realease)


落ち着いた、おだやかな雰囲気のインストゥルメンタル・ヒップホップが並ぶ作品。まどろむような、のんびりと一息つくような、そんな雰囲気がとてもいいです。ひなたぼっこをしている気持ちにさせる、ほんのりとした暖かさを感じさせる音が響いています。

作者は日本人ビートメイカーのスウィート・ウィリアム。『ビート・テーマ』というタイトルだけあって、ビート・ミュージックをテーマにした作品のようです。ジャズ、ソウル、エレクトロニカといったあたりの音楽をヒップホップで包み込んだような音楽を展開しています。