このヒリヒリとした痛みを伴ったような歌声にはどうしたって心を揺さぶられます。切迫感とでも言いましょうか、そんな感覚を覚える瞬間も……。そう感じさせるのはもちろん曲調や編曲によるところはあるのでしょうが、この歌声ですべてを持って行くかのようです。
本作はアメリカの女性シンガーソングライターであるジュリアン・ベイカーの3作目のアルバム。わたしはこの人の作品は初めて聴いたので、まずはこの歌声に触れずにはいられず……、そして書きました。それぐらい強い個性、存在感があります。音楽的には1980~90年代のアメリカのオルタナティヴ・ロック、グランジを連想させるインディー・ロックといった趣き。演奏は熱くなってもどこか冷めた感触を残しつつ、それぞれの楽器が鳴っています。おごそかな空気を漂わせる中盤から後半の流れが個人的には特に好きです。